2020年 2月号 宗教とは自己というものが真に自己になる道であり、同時にまた人間というものが真に人間になる道である。

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西谷啓治 『真宗大綱』「西谷啓治著作集」

 2020 年の1月の月間積雪量がゼロという観測史上初めての記録となりました。人生で初めての経験です。一度も雪かきをしないで すんだ ということは老体には有りがたいことですが、なにか普通では無いという不安感がついてきます。先日のテレビではオーストラリアの昨年から鎮火していない山林火災が日本の冬の温暖化に影響を与えているという大学教授のコメントがありました。昨年から燃え続けていて日本の面積のおよそ3分の1に匹敵する森林や農地が燃え続けているという想像も出来ない規模の火災です。その国土の大きさに改めて驚きます。そんな火災が地球規模の気候に大きな影響を与えているということも初めて知ったことです。そして何種類もの動物がその影響を蒙(こうむ)っていて 種によっては絶滅の危機さえあるということです。そして、火災の原因には人間がもたらした地球の温暖化に伴(ともな)う異常乾燥ということがあるのだそうです。人間の無自覚さ、思い上がりが招(まね)いたツケを払わなければならない時に さしかかってきたのかな と思ってしまいました。

 今月の言葉は石川県鳳至(ふげし)郡能登町宇出津(うしつ)出身の西谷(にしたに)啓治(けいじ)先生(1900年 – 1990年)の著作集 20 からです。親鸞聖人の700回御遠忌(ごえんき)の記念に、鈴木大拙(だいせつ)、曽我(そが)量深(りょうじん)、 金子大栄(だいえい)という三人の先生が3日間にわたり比叡山ホテルで親鸞の世界を語り合われました。その司会を務(つと)められたのが西谷先生でした。当時は京都大学の哲学の教授でした。鼎談(ていだん)は『親鸞の世界』として本願寺出版部から出版されています。京都大学退官後は大谷大学教授を務めてくださいました。西谷先生の著作集は全26 巻ですが、その第20巻「随想(ずいそう)1 風のこころ」からです。24~26巻は「大谷大学講義」が収められています。(創文社(そうぶんしゃ)西谷啓治著作集 全26巻)
 この本は次の言葉から はじまります。「宗教と人生といっても、人生を離れて宗教はないと同様に、宗教を離れて人生もない。人生の最も根本のところにおいては、宗教は人生そのものである。」(同書5p)。では、現実の日本の宗教に対する考え方はどうでしょうか。NHKに「日本人の宗教意識や行動は どう変わったか」という調査報告があります。それを見ますと、「宗教は信じない」と自認(じにん)する人が増えているのです。2018年の調査では宗教を信仰しているのは36%、信仰している宗教は無いが62%、と報告されています。信仰心は全くないという回答が18才から39才では42%でした。このような現在の日本人の宗教意識を念頭に置いて西谷先生の本を読み進めますと「宗教とは自己 というものが真に自己になる道であり、同時にまた 人間というものが真に人間になる道である」とあり、さらに「宗教において初めて、人間としてのわれわれの窮極的(きゅうきょくてき)な本質が、底の底から、丸ぐるみ、押し出されてくる。しかも それは常に、自己が真に自己自身になるという仕方(しかた)においてだ。」 (同前)という言葉に出会います。哲学のことば ですから 少し難しい表現でしょうかね。宗教意識の変化とは実は自分自身に対する思いの変化です。NHKの調査にはある示唆(しさ)があります。それは、「人間に生まれたことを課題として、本当の人間になろうとすることを見失ってしまったのが現在の日本だ」と言えるように思います。家の中から仏壇が無くなっていく傾向が進んでいるようです。それは西谷先生のいわれる「人間というものが真に人間になる道」を見失って 未完の人間のまま 一生を終えるような人生が 現在の日本人の心の中味といえるのでないでしょうか。

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