上巻 第四段 蓮位夢想

上巻 第四段 蓮位(れんに)夢想(むそう)

聖運寺蔵『親鸞聖人御絵伝』


〈 御伝鈔 意訳 〉『親鸞聖人伝絵-御伝鈔に学ぶ-』東本願寺出版部より

 建長(けんちょう)八年(一二五六)二月九日の夜、親鸞さまのお弟子の蓮位房(れんにぼう)が、次のような夢を見たと伝えられています。
「聖徳太子が、親鸞さまに向かって礼拝(らいはい)され、この迷い苦しむ人々が充(み)ちみちている、濁(にご)りきったこの世の中に、真実の教えの種子(しゅし)をまき、目覚(めざ)めた世界に人々を導かれる、生きた阿弥陀如来を拝(おが)ませていただきます、とおおせになりました」と。
 この伝説の意味は、親鸞さまの教えを受けた人々は、親鸞さまこそ、阿弥陀如来にちがいないと ごく自然に受けとめることができたことをあらわしているのでしょう。


〈 御伝鈔 原文 〉

建長(けんちょう)八歳(はちねん)丙辰(ひのえたつ)●二(にン)月(がッ)九(ここぬかノ)日(ひノ)夜(よ)寅時(とらノとき)●釈(しゃくノ)蓮位(れんに)、夢想(むそう)の告(つげ)に云(い)わく●聖徳太子●親鸞聖人を(ノ)礼(らい)したてまつりましまして、のたまわく●「敬(きょう)礼(らい)大(だい)慈(じ)阿(あ)弥(み)陀(だ)仏(ぶッ)●為(い)、妙(みょう)教(きょう)流通(るずう)来生者(らいしょうじゃ)●五濁悪時(ごじょくあくじ)悪世界(あくせかい)中(ちう)●決定(けッじょう)即(そく)得(とく)無上覚(むじょうかく)也(や)●」しかれば祖師(そし)聖人●弥陀如来の化現(けげん)にてましますという事(こと↑)、明らかなり。